食べてしまいやすいもの
- 異物カテゴリ:
- 中毒を起こす異物
- 危険度:
- A
たまねぎ
たまねぎの特徴・誤飲時のリスク
タマネギ中毒という名称はオーナーの皆様の間でかなり知られていますが、これはタマネギだけが限定して引き起こす中毒ではなくネギ科の植物全般が起こし得るもので、具体的には長ネギ、ニンニク、ニラ、エシャロット等も同様の中毒成分を含有しており、同じ症状を引き起こす可能性があります。
中毒量に関してはかなり個体差があり、微量でも発症することがある一方で多量に食べても無症状の場合もあります。様々な見解がある中で、摂取した動物の体重の0.5%量が一つの目安とは言われています。また加熱処理されていても中毒物質は全く無害化しないことが知られています。
この中毒により引き起こされる症状として嘔吐や下痢などの一般的な消化器症状もありますが、一番恐ろしい症状はそこではなく溶血です。溶血とはネギ類に含まれている強力な酸化成分の影響で血液中の赤血球がどんどん破壊されていくことです。破壊されて赤血球が不足している状態を溶血性貧血といい、全身に酸素を運搬する赤血球が足りなくなるため酸素不足から全身の機能不全に陥り、やがて死に至ります。
溶血しているかどうかの判りやすい症状は尿の色です。溶血により破壊された赤血球の成分が尿に混ざり紅茶のような赤色の尿が出ます。しかし赤い尿が出た時は既に溶血がある程度進行している状況であり、赤い尿が出てくるまで様子を見ることはお勧めできません。誤飲の疑いが少しでもあれば症状が無くても早急に対応することが最善の対応といえるでしょう。
たまねぎ誤飲時の主な処置
タマネギ中毒の成分に対する解毒剤はありません。酸化物質なので抗酸化作用のあるビタミンCやEが有効なのではないかという論説もありますが、それが劇的な効果を生むことはありません。
食べてまだ間もない場合は吐かせる処置をおこない少しでも胃腸から消化吸収される量を減らすことが重要です。同時に既に消化吸収されてしまっている成分に対しては点滴治療による対外へのウォッシュアウト処置も大切です。
溶血性貧血が既に始まってしまっている場合は生命に関わる重大な状態と理解しましょう。症状の重さにあわせて輸血や酸素吸入などの緊急治療も必要になりますが、それらの治療でも溶血が止まるわけではなく、あくまで溶血が止まるまでの時間稼ぎでしかありません。始まってしまった溶血を止める治療法は無いため、溶血を引き起こす中毒物質が体外に排泄されるまで上記対症療法を施しながら嵐が過ぎるのを待つしかないのです。