病院へ行く前に
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思い込みでは
ないですか?あなたは今、愛する家族である動物が誤飲事故を起こしてしまい、慌ててネット検索をしてここにたどりつきました。今すぐ出来ることはないか? あるいはすぐに救急病院に駆け込んだほうが良いのか? 適切なアドバイスを欲していることと思います。でもその前にひとつだけ確認して下さい。シンプルなことです。「本当に誤飲しましたか?」
誤飲した!と慌てて救急病院に駆け込んでくる症例のうち、オーナー様の勘違いで、実は何も飲み込んでいなかったという事例が数多く認められます。ご自身の目の前で、確実に飲み込んだ瞬間を目撃した方はここは飛ばして結構です。
しかし「飲み込んだような気がする」「飲み込んだように見えた」「どこにも(異物が)無いから飲み込んだと思う」という方は、病院に向けて出発する前に、もう一度冷静になってみて下さい。 -
病院へ行く前に、やるべきことを冷静に進めてください
まずはとにかく本当に何かを飲み込んでいるのか、飲み込んだと思われるものが特定される場合(例:テーブルの上に置いてあったゴムボールがどこにも無い)は、実は動物がコッソリとソファの下に隠している可能性は無いか? 遊んでいるうちに転がっていってしまい想定より離れた場所に無いか? とにかく家の中を良く探して下さい。もし探して家の中で見つかれば、それで問題は解決です。
一方、飲み込んだと思われるものが何か判らない(例:ふと動物を見たら何かを噛んでいて、アッと思ったら飲み込んでしまった)場合は、何か無くなっているものは無いか? 冷静に良く思い返しながら周囲に思い当たるものが無いか探して下さい。 -
異物誤飲の処置で必要な情報「4W1H1R」
What ?
何を飲んだ?Where ?
いま、体のどこにある?When ?
いつ飲んだ?Who ?
だれが飲んだ?How ?
丸のみ? かみ砕いた?
袋ごと? 中身だけ?Really ?
本当に飲んだ?
異物誤飲に正確に対応して動物たちの被害を最小にするために把握するべきことを「4W1H1R」として上記にまとめてみました。これらの情報を正確に把握できていればいるほど“勝ち目”は増します。そしてこの情報把握はオーナーと獣医師の共同作業で補完されていくものです。
例えば「Wrere?いま、体のどこにある?」の情報は獣医師が触診やX線検査、エコー検査などを実施しないとなかなか正確に把握するのは困難ですが、それ以外の情報はオーナーしか把握できません。ちなみに「Who? だれが飲んだ?」「動物に決まっているだろ!」と思うかもしれませんが、これは多頭飼育で誤飲の瞬間を見ていない場合の注意点です。思い込みに囚われないように気を付けましょう。
【目の前で】飲み込んだのが
「確実」な場合
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中毒を起こす異物を飲み込んだ場合
塩を飲ませて吐かせるとか、アルカリ性のものを誤飲したら牛乳を飲ませて中和するとか、自宅で出来る対処法がweb上で色々と紹介されていますが、どれもお勧めしません。嫌がる動物に不慣れな操作で無理やり塩などを飲ませることを試みて、うまくいかなければただいたずらに時間の浪費で、この間に刻々と中毒物は吸収されていきます。それよりも、できるだけ早く動物病院を受診して対応に慣れた獣医師に処置・治療してもらったほうがはるかに効率的です。
飲み込んだ薬理的異物の個別情報へ -
傷つけ・詰まる異物を飲み込んだ場合
物理的な異物を飲み込んだからと言って全てが即緊急状態というわけではありません。しかし、だからのんびりと構えていれば良いかというと、そうとも言い切れません。例えばお腹を開かずに異物を摘出する内視鏡処置は胃の中にある異物には届きますが、その先の腸の奥に流れてしまうと届きません。吐かせる処置も同様で胃よりも奥に行ってしまうと吐かせることはできません。なので症状が無くても早く動物病院を受診して適切な判断をしてもらうことは、様々な面で状況を有利に運ぶことができます。
飲み込んだ物理的異物の個別情報へ
【夜間・外出中などに】誤飲の疑いがある場合
発見時・現在状態のメモ
すみやかな処置をするために下記のメモを取って頂ければと思います。動物病院に駆け込んだはいいが、慌て過ぎたせいで獣医師が判断するのに必要な情報を全て家に置いてきてしまったということがないようにしましょう。
目撃(発見)したのはどなたですか?
基本的に異物誤飲の瞬間に現場にいて、それを見ていた人がいるのであれば、その人が動物を連れて来院することが望ましいです。様子を見て大丈夫か? 吐かせるべきか? 獣医師はその判断をするためにオーナーに色々な質問をします。しかし「妻が見ていたそうなんですが、私は判りません」という対応をされてしまうと得られるべき情報が得られず正確な判断は遠ざかってしまいます。
いつ(から)ですか?
あせると数秒が数分にも数十分にも感じられるものです。とくに中毒物の場合、発生・発見からの時間が大切な情報となるので、発見した時間や、その後吐き気があれば吐いた時間。下痢をすれば下痢した時間。さらに例えば外出中に誤飲してしまった場合、少なくとも何時の時点ではまだ家にいて誤飲はしていなかったと言える時間。それらの時系列を記録しましょう。
吐しゃ物・残遺物などの採取、現場の撮影
現在状態の動画(静止画)撮影
誤飲の疑いがあり、その後例えば震えているとか、変な姿勢をするとか、いつもと違う様子があれば動画撮影しておきましょう。以外と病院に連れて行ってみると動物たちも緊張のせいか症状を隠してしまうことは良くあります。「本当にさっきまで症状があったんですよ!」と必死に訴えながらその症状を口で伝えるよりも、動画を獣医師に見せたほうがはるかに伝わるのは言うまでもありません。
吐しゃ物、便、尿の採取
吐しゃ物や直近で排泄した便、尿などがあれば獣医師が治療対応する判断材料になることがあります。無理にさせる必要はありませんが、もしあれば必ず動物病院に持参しましょう。
残っている異物(薬理・物理ともに)の取得
異物を誤飲したと言っても丸飲みとは限りません。噛み砕いてその一部を飲み込んでいたり、容器ごと飲み込んでいたり、色々なパターンがあります。誤飲した異物の破片などがあれば必ず動物病院に持参しましょう。そこから摂取した中毒量を予測したり、破片の状態から危険な形状かどうかを推測したり、多くのヒントをもたらしてくれる可能性があります。
現場の撮影(広い範囲で何か所・何枚か)
食い散らかされた現場の様子や吐いた吐しゃ物の色など、現場の状況から推理できることもあるかもしれません。余裕があればスマホで現場写真を撮影しておくことも、後から思わぬヒントに繋がるかもしれません。