誤飲を防ぐために
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大切な家族を
失わないために誤飲予防対策において、まず大前提として全ての動物は人間の常識では考えられないようなものを誤飲してしまう可能性があるということを認識しておきましょう。
世の中のあらゆるものを一つずつ、これは食べて良いもの、これは食べてはいけないもの、と動物たちに教育することは現実問題として不可能です。なので届く範囲には誤飲する可能性のあるものを絶対に放置しないこと。これを徹底するしかありません。
では誤飲する可能性のあるもの、誤飲する可能性のないもの。これをどう判断するか?
これも我々人間が正確に一つずつ把握することは不可能です。動物の種類、大きさ、性格などによって誤飲の可能性は全く異なるし、普段は全く誤飲などしないのに「まさかこの子が!」という事例は動物病院では珍しくありません。
どんなものでも誤飲し得るという前提で日々の暮らしをデザインすることが必要です。
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夜間・外出中に多い
誤飲事故夜間救急の動物病院には多数の異物誤飲症例が来院することをご存じですか?なぜなら動物たちが深夜に異物を飲み込む習性があるから!・・・・・ではありません。オーナー様が仕事から帰宅してみたら、おとなしくお留守番している筈の動物たちが部屋を荒らしていた。あれを飲んじゃったかも!と慌てて救急に駆け込むケースが非常に多いのです。つまり誤飲事故はオーナー様が眼を放している間に発生するケースが多く、誤飲するその瞬間を確認していない場合が多いので、(飲んだか飲んでないのか?量は?等々)色々なことが不確実で非常に対応が難しい場合が多いのです。
誤飲データ
救急病院における5年間のデータです。誤飲しやすい環境についてご参照ください。
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異物誤飲
5年間の来院件数と動物別の内訳 -
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異物誤飲
犬種別来院件数ランキング順位 犬種 1 F・ブルドッグ 2 ジャックラッセルテリア 3 ラブラドール 4 T・プードル 5 パピヨン 6 コーギー 7 チワワ 8 M・シュナウザー 9 キャバリア・KCS 10 M・ダックス -
異物誤飲
異物別来院件数ランキング順位 異物 件数 1 人用の薬 115 2 チョコレート 102 3 鳥の骨 57 4 竹串 51 5 ネギ類 51 6 つまようじ 30 7 タバコ 24 8 ビニール袋 23 9 プラスティック片 22 10 乾燥剤 17
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誤飲事故を起こさないためにできること
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基本となる考え方
異物誤飲事故を予防するためにまずは大前提となる考え方を認識して頂きたいと思います。それは世の中のあらゆる物を「これは食べていい食物」「これは食べてはいけない異物」と全ての動物が正確に判断してくれることを期待してはいけないということです。
文章にすると当たり前のようですが、人間の価値観なら当たり前のことを動物たちも当たり前に共有してくれていると、なんとなく期待してしまってはいませんか?
「まさかうちの子が誤飲するなんて」という言葉は動物病院では良く聞かれる言葉です。「うちの子に限って」と考えるのではなく「うちの子もやるかもしれない」という前提で考えない限り誤飲事故を無くすことはできません。 -
反省を期待してはいけない
異物誤飲を一度やった動物が二度、三度と同じ過ちを犯して動物病院に来院するケースが非常に多いことを御存知でしょうか?
一度やって痛い目をみたからもう懲りて反省しているだろうと考えるのも非常に危険です。むしろ一度でも異物誤飲の経験がある場合はそれまで以上に注意深く管理しなくてはいけません。 -
動物のせいにしても何も解決しないし次にも繋がらない
しつこく書きますが、動物は異物誤飲するのが当たり前ぐらいの認識でいないと異物誤飲を無くすことはできません。異物誤飲事故が生じてしまったら、それは動物のせいではなく、異物誤飲するのが当たり前の動物をちゃんと管理しなかったオーナーのせいです。
逆に言えば、オーナーがしっかりやるべき管理を怠らなければほとんどの異物誤飲事故は予防できるということです。 -
具体的な管理について
大前提として動物は異物誤飲するのが当たり前ぐらいの心構えでいるべきであり、だからオーナーがしっかり管理することが大事。
ここまではご理解頂けたとして、それでは具体的に管理とは何をしたらいいのでしょうか? 何が出来て何が有効なのか? 以下にみていきましょう。 -
環境整備
まずは何より環境整備です。動物が届く位置に余計な物を置かないこと。そのためには行動エリアを制限することが有効で、特にオーナーが留守中や就寝中だけでも行動スペースを制限し、そのエリア内の余計な物は全て排除。これだけでも異物誤飲事故の確率を大きく下げることが可能です。
またオーナーの在宅中でも一瞬のスキに誤飲してしまうことはあり得ます。ゴミ箱や収納を蓋付き、鍵付きのものに変更することも非常に有効な手段です。 -
ニーズを満たすこと
誤飲すべき異物を全て排除すれば誤飲は起こり得ない。言うのは簡単ですが、何もかも全て取り上げるという訳にもいきません。
例えば、子犬は本能的に何かを噛みたいという行動ニーズがあります。しかし噛むべきものが無ければ、何か噛むものを探してしまい、結果的にはこちらが望んでいないものを探して噛む→飲み込むという流れになりがちです。なので過剰にならない最低限のニーズを満たしてあげることも大切です。
噛む玩具を選んであげる際には、信じられない大きなのものでも飲み込んでしまうこともあるので、推奨される犬種ごとのサイズより2サイズ程上のものを選んであげることも有効です。 -
オーナー家族間の共通認識とすること
異物誤飲で動物病院に来院されたオーナーの口から良く聞かれる言葉に「私は用心深く気を付けていたんだけど娘が(異物を)置きっぱなしにして・・・」とか「いつもは気を付けているんだけど、今日は休日で夫が・・・」といった言い訳があります。
物凄く注意深く努力していても、一人でもその認識が甘い家族がいれば、その努力は一瞬で台無しになってしまう可能性があります。
家族全員で意識を共有する努力無しに異物誤飲事故を避けることは困難です。