誤飲コラム
異物誤飲も色々です
動物の異物誤飲とひとことで言っても、実は色々な種類があります。
このサイトの中でも大きくフィーチャーしている「物理的異物」と「薬理的異物(中毒物)」というカテゴライズの仕方もありますが、全く違う視点で、今その異物はどこにあるのか?という分類もできます。
異物誤飲した場合に一番異物が止まっている時間が長い場所は胃です。この場合は「胃内異物」と言い、対処法は催吐処置、内視鏡、開腹など状況に合わせて手数も豊富で、それだけ勝ち目も高いので、獣医師としては胃にある間になんとかしたいものです。
胃を通り過ぎてしまうと腸に入り「腸管内異物」となります。腸は非常に長く、胃からすぐの十二指腸から始まり、空腸、回腸、結腸、直腸のどこにあるのか?によって、細かい判断は変わりますが、基本的には腸に達してしまったら催吐処置で吐かせることはできないし、内視鏡は届かない場合がほとんどです。必然的に対応は開腹か?それとも自然排泄を祈って待つか?の二択を迫られます。
動物もオーナーも最も嬉しくない処置である開腹手術は私としても出来ることなら提案したくないのですが、提案しなくては改善する見込みが無いのであれば提案しない訳にはいきません。ついつい、もうちょっと待てば便と一緒に自然排泄されるかもという希望的観測に依存してしまいそうになりますが、その結果ダラダラと時間が過ぎて腸のダメージが増し、取り返しのつかない状況に陥るのは絶対に避けなければなりません。そういう意味で、「腸管内異物」は「胃内異物」よりもはるかにシビアな状況と言えます。
胃か腸。どちらかにある場合がほとんどですが、それ以外の場所にあることもあります。
意外と多いのが食道です。誤飲したものが喉を通過してから胃に到達するまでの通り道が食道で、普通の食餌であれば数秒で通過してしまう場所ですが、身体のサイズに見合わない大きなものを飲み込んでしまうとギチギチに詰まってしまい、胃に落ちていかない状態になります。実は「食道内異物」は「腸管内異物」に匹敵するか、場合によってはそれ以上の危険性も孕んだ非常に厄介は状況なのです。この「食道内異物」に関しては、改めてまた別の項で詳しくご説明します。
さらに「口腔内異物」という状況もあります。飲み込んだと思っていたら、実は歯に引っかかっていた。とか、舌に刺さっていた。とか、状況は色々ありますが、こちらは見た目のインパクトの割に生死に関わる事態に陥ることは、私の経験上ほとんどありませんでした。しかし人間では幼児の上顎に割りばしの破片が刺さり脳に達して亡くなってしまった有名な痛ましい事故等もありましたので、今後も油断することなく対応していきたいものです。
このように異物が潜伏している場所は色々で、本当に信じられないようなものが信じられない場所にあることを私は多数経験してきました。今後はもう少し具体例も含めて解説していきたいと思います。
執筆者プロフィール
港北どうぶつ病院 院長
新井 勇人Hayato Arai
資格・所属
- 獣医師免許番号 第41079
経歴
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麻布大学卒業
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平成14年4月〜
横浜市内動物病院勤務
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平成17年1月〜
横浜夜間動物病院(現・DVMsどうぶつ医療センター横浜)にて救急医療に従事
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平成20年3月〜
横浜夜間動物病院 院長就任
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平成25年2月
開業準備のため退職
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平成27年~
港北どうぶつ病院 開業