食べてしまいやすいもの

異物カテゴリ:
傷つけ・詰まる異物
危険度:
小~中型犬でA、大型犬はB、超大型犬はC

バッグ・クロージャ―(食パンの袋どめ)

バッグ・クロージャ―(食パンの袋どめ)の特徴・誤飲時のリスク

タイトルを見た皆様。

食パンの袋を締めて止めておく、あの誰でも見たことあるやつ。

これです!

 

 

これの名前、知っていましたか?

私は恥ずかしながら知りませんでした。

 

これがまた「バッグ・クロージャ―」って・・・。

単語の意味的にはそのまんまですけど、なんかちょっとカッコいい。

 

「The X-Files」「24-TWENTY FOUR-」「Bag closure」「CSI」

とか並べても音的に違和感ない感じ。

 

まぁそんなことは置いといて、これちょっと要注意なんです。

私の異物誤飲診察歴の中で過去に何度も摘出したことがあります。

そしてその摘出方法が全て開腹による腸切開での摘出なのです。

これが何を意味するかと言うと、犬の腸で詰まるちょうどいい大きさの可能性があるということです。

 

どういうことかもう少し説明します。

なんらかの異物を誤飲した時にデカ過ぎるものは、そもそも細い腸に入り込めないのでその手前の胃の広い空間内で停滞します。胃にある限り急激な緊急状態に陥る可能性はそんなに高くありません。

逆に小さ過ぎる異物は細い腸に入りこんでしまいますが、そのまま通過して便と一緒に排泄されます。

腸に流れ込んでもスムースに通過する限り害はありません。(中毒物は全く別です!)

しかし腸で詰まってしまう腸閉塞は激しい嘔吐と腹痛、食欲廃絶でグッタリしてしまう。まさに緊急疾患です。

さらに言えば、胃で停滞している異物は催吐(吐かせる処置)や内視鏡など対処の選択肢が複数ありますが、腸の奥にいってしまったら開腹手術一択になってしまいます。

そしてこのバッグ・クロージャ―ぐらいが、(主に小型犬の)腸に流れ込めるギリギリの大きさで、しかし腸をスムーズに通過するにはちょっと大きくて、つかえてしまう絶妙な匙加減ということです。

 

特に小型犬から柴犬ぐらいの中型犬が要注意領域ですが、私の経験としては最大で20kgぐらいの大型犬(雑種でした)でも詰まっていたことがあります。

 

もちろん私の病院には異物誤飲で困っているオーナーや、他の病院で対応してもらえなかったオーナーが多数集まってくるので、世の中全部を見回せばバッグクロージャ―を飲み込んだけど放っておいたら勝手に吐き出したとか、うんちと一緒に問題無く出て来たとか、そういう事例はいくらでもあるでしょう。

なのでバッグクロージャ―を飲み込んでしまったら必ず危険なことが起こりますと断言する訳ではありませんが、実は安易に考えて放置すると痛い目をみることがあるものだとオーナーの皆様には認識して頂きたいと思います。

 

 

バッグ・クロージャ―(食パンの袋どめ)誤飲時の主な処置

もし目の前で飲み込んだ瞬間を確認しているのなら、すぐに動物病院に向かいましょう。

飲み込んでからの時間が短ければ短いほど腸の奥まで入り込んでいる可能性は低くなります。腸の手前の胃で停滞している段階であれば催吐処置や内視鏡を用いて腸閉塞発症前に無傷で摘出できる可能性があります。なのでもし確実に飲み込んだ瞬間を目撃したのであれば一刻も早く動物病院に行くべきです。

それが夜間であれば翌朝まで待たず近隣の夜間救急対応をしてくれる病院に行ったほうが良いでしょう。

 

「何時間以内なら大丈夫ですか?」という質問を良く頂きます。これは今回のバッグクロージャ―に限らず全ての異物誤飲で言えることですが、〇時間以内という明確な線引きは出来ません。

飲み込んで1時間後にはもう腸に達している場合もあるし、飲み込んで一週間経ってもずっと胃で停滞している場合もあります。

異物の大きさ、形状、動物の腸の太さ、腸の活動性、食餌の種類、食欲の有無、その他色々な要素に左右されるためです。

なので明確な時間を示すことは難しいですが、冒頭にも書いた通りバッグクロージャ―は腸閉塞を起こす「ちょうどよい」ぐらいの大きさなので、可能な限り早いほうが良いとしか言えません。

逆に言えば、〇時間を経過したらもうアウト!という決まりも無いので、既にある程度の時間が経過していたとしても、あきらめて放置することはせず、出来る範囲内で早急に動物病院に行くべきでしょう。

 

飲み込んだのは判っていたが、何もせず様子を見ていた。しかし何度も嘔吐をし始めた。

あるいは

飲み込んだのは判っていたが、何もせず様子を見ていた。特に今も何も症状は無い。

という場合はどうでしょう?

 

前者であれば、それは既に腸閉塞を起こしている可能性がありますので、一刻も早くの動物病院受診を強くお勧めします。

後者の場合は色々な可能性が考えられます。ずっと悪さもせず胃に停滞している可能性。腸に流れて順調に通過途中の可能性。実は気付かないうちに便と一緒に既に排泄されている可能性。などです。

この場合は一刻も早く病院に駆け込むべき緊急性はありませんが、体外に排泄されたことが確認できていない以上、問題は解決されていません。やはりかかりつけの動物病院に相談には行くことをお勧めします。

バッグクロージャ―を飲み込んだ場合に自宅で解決できることがあるとしたら吐き出させることになりますが、基本的に当ホームページにてオーナー様が催吐処置をすることは推奨しておりません。気軽な催吐処置は様々なリスクを孕んでいるからです。

対処法は結局動物病院を受診する以外にないということになりますが、大事なことは誤飲から受診までの時間が早ければ早いほど催吐、内視鏡と言ったダメージの少ない解決策の選択肢は広がるということです。

もちろん何もせず様子を見ていたら自然に排泄されて問題が解決される可能性もありますが、その可能性が極めて高いのであれば、わざわざこのように紹介することはありません。その意味を良く理解して頂いたうえでオーナーの皆様が賢明な判断をされることを願います。

 

 

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