症例紹介
中毒を起こす異物
傷つけ・詰まる異物
内視鏡による摘出
犬/点眼薬
誤飲の詳細
今回紹介するのは点眼薬を容器ごと丸飲みした症例です。
ここでの一つのポイントはプラスティック容器という詰まったり・傷つけたりする物理的異物というリスクと、医薬品(中毒物)であるリスクが混在している点です。
それでは見ていきましょう。
今回飲みこんでしまったのは11カ月齢のフレンチブルドッグの女の子です。体重約10kg。
実は飲み込んだのは5日前で、飲み込んだその日のうちにかかりつけ病院で催吐処置をしてもらったが出てこなかったそうです。
オーナー様も飲み込んだ瞬間を見た訳ではないので、実は飲み込んでいないのかも。またかかりつけの先生に自然に(便と一緒に)出る可能性もあるからと言われ、そこからそれ以上内視鏡とか開腹などの深追いはせず帰宅。
特に何も症状は無く、そのまま様子を見ていたところ、翌日の便に点眼薬の先端の部分だけが混じって出てきたそうです。
この部分です。
やっぱり飲み込んでいた!ということで残りも便と一緒に出てくるかな?と毎回する便をチェックしていたけど全然出てくる気配が無いので徐々に心配になり、当院のホームページを見て御来院されました。
来院時の身体検査で全く異常は認めず。元気いっぱいな様子でした。
いくつかの検査をして、その結果と飼い主様のお話を統合すると、今も胃内にある可能性が考えられましたので内視鏡を入れてみることになりました。
実際に内視鏡を入れてみると、口から食道を通過して胃に入った瞬間に点眼薬の容器が内視鏡の映像に飛び込んできました。胃の入り口である噴門からすぐのところに、容器本体とキャップが仲良く並んで落ちていました。
実はこの噴門入ってすぐという位置は厄介で、内視鏡を自在に操作するスペースが確保できないので異物の摘出が難しい位置ではあるのですが、当院ではそのあたりの対処法も熟知しているので、結果的にはほんの5分ほどで本体もキャップも摘出しました。
実際の画像です。いちおう吐物なのでモザイク処理しています。ハッキリご覧になりたい方は画像をクリックして下さい。
これで物理的な異物としてはパーツが揃ったので問題解決です。
残りの問題は中身です。点眼薬は当然薬品ですから中毒の可能性も考慮しなくてはいけません・・・が、今回のように既に飲み込んで5日が経過している状況で症状も無く、また内視鏡前の術前検査でほとんど異常値もありませんでしたので、これ以後に中毒症状が起きるという可能性は極めて低いと判断し、特に追加治療などは実施しませんでした。
麻酔からの醒めも良好で、その日の午後には退院。
数日後に経過をお聞きしたところ、後遺症も無く元気に過ごしているとのことでした。
執筆者プロフィール
港北どうぶつ病院 院長
新井 勇人Hayato Arai
資格・所属
- 獣医師免許番号 第41079
- 横浜市獣医師会所属
経歴
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麻布大学卒業
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平成14年4月〜
横浜市内動物病院勤務
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平成17年1月〜
横浜夜間動物病院(現・DVMsどうぶつ医療センター横浜)にて救急医療に従事
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平成20年3月〜
横浜夜間動物病院 院長就任
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平成25年2月
開業準備のため退職
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平成27年~
港北どうぶつ病院 開業